「うちは財産が少ないから相続なんて関係ない」——実はその思い込みが一番危ないんです
最近、近所の方から「遺言書って書いた方がいいの?」「相続って何から始めたらいいの?」というご相談をぽつぽつといただくようになりました。
「まだ開業していないんで相談受けれないんです」と前置きしつつ雑談程度に・・・。
そして、お話を伺う中で本当によく出てくるのが、こんな言葉です。
「うちは大した財産もないし、相続で揉めるなんて関係ないわぁ」
——気持ちは、よく分かります。テレビドラマで見るような「兄弟が遺産をめぐって骨肉の争い」みたいなイメージは、たしかに大豪邸のお話のように感じますよね。
ですが、実はこの「うちには関係ない」という思い込みこそが、一番危ない入り口だったりするのです。
データが示す意外な事実
最高裁判所が毎年公表している司法統計を見ると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件のうち、遺産額5,000万円以下のごく普通の家庭が全体の約76%を占めています。
さらに踏み込むと、争いになった遺産額の3件に1件は1,000万円以下というデータもあります。
つまり、家庭裁判所で揉めているご家庭の多くは、決して「お金持ちの一族」ではないのです。むしろ、ごく普通の家庭の方が圧倒的に多い。これ、なかなか衝撃的な事実ではないでしょうか。
なぜ「財産が少ない方」が揉めやすいのか
理由はシンプルです。遺産の中身が「自宅(不動産)」中心になりやすいからです。
たとえば、亡くなったお父さんの遺産が「実家の土地・建物が2,000万円、預貯金が300万円」だったとします。相続人がお子さん3人なら、法定相続分は一人あたり約767万円。
ところが、実家を3等分するわけにはいきません。建物を真っ二つに切るなんて物理的に不可能ですし、土地も簡単には分けられない。
「じゃあ売って現金で分けよう」と提案しても、
- 思い出のある実家を売りたくないと考える兄弟
- すでに実家に住んでいる兄弟
- 早く現金化したい兄弟
それぞれの事情と思いがぶつかり合います。預貯金が潤沢にあれば「家を継ぐ人が、他の兄弟に代わりにお金を払う(代償分割)」という選択肢もあるのですが、預貯金が少ないとそれも難しい。
結果、話がまとまらず、家庭裁判所へ——というケースが本当に多いのです。
「仲のいい兄弟だから大丈夫」も要注意
「うちの兄弟は仲がいいから揉めるはずがない」とおっしゃる方も多いのですが、ここにも落とし穴があります。
ご本人同士は仲が良くても、結婚されていれば配偶者という存在がいます。「お宅の旦那さんの実家、どうなってるの?」と外から声がかかった瞬間、空気が変わってしまうことは少なくありません。
また、ご両親が元気なうちは話題にしづらかった「介護を誰が担っていたのか」「生前にどれくらい援助を受けていたのか」といった積年の事情が、相続を機に一気に表面化することもあります。
だからこそ、生前の準備が大切
では、どうすればいいのか。答えはとてもシンプルで、遺言書を一通用意しておくこと。これだけで、防げるトラブルの数は本当に多いのです。
「うちには大した財産はないから」——そう思われている方こそ、自宅という分けにくい財産を抱えていることが多く、実は遺言書の効果が大きいケースだったりします。
遺言書には自分で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」がありますが、それぞれの特徴や使い分けについては、また別の記事でじっくりお話ししたいと思います。
「うちには関係ない」と思った方こそ、一度立ち止まって考えてみていただきたいテーマです。

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