自筆証書遺言、書くなら知っておきたい4つのルールと落とし穴


前回の記事では、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを比較しました。今回はその続編として、「もし自筆証書遺言を選ぶなら、絶対に押さえておきたいルール」について、もう少し詳しくお伝えしたいと思います。

自筆証書遺言は手軽に書ける反面、ちょっとしたミスで遺言全体が無効になってしまうこともある、意外とシビアな制度です。せっかく想いを込めて書いた一通が、形式不備で「ただの紙切れ」になってしまっては、あまりにも悲しいですよね。

ルール①:全文を「自書」する(財産目録を除く)

民法968条1項では、遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印することが求められています。

つまり、

  • パソコンで作成して印刷したもの → 無効
  • 家族や知人による代筆 → 無効
  • 録音・録画による遺言 → 無効

ただし、2019年1月の民法改正で、財産目録(別紙)についてはパソコン作成や通帳のコピーでもOKになりました。財産が多い方にとっては、ありがたい改正です。ただし、財産目録の全ページに署名押印が必要(両面記載なら両面に)という点はお忘れなく。

ルール②:日付は「年月日」を正確に

「令和○年○月吉日」——これ、よくやってしまいがちですが、無効です

最高裁判所の判例(昭和54年5月31日)でも、「吉日」のような特定できない記載は日付として認められないとされています。「○月吉日」と書いた一通の遺言が、それだけで無効になってしまうのです。

必ず「令和○年○月○日」と、具体的な日付を書きましょう。

ルール③:押印を忘れない

「印を押さなければならない」と民法に明記されているので、押印がないと無効です。

なお、認印でも有効とされていますが、後々の信頼性を考えると実印を使い、印鑑証明書も一緒に保管しておくのが無難です。シャチハタは避けたほうがよいでしょう。

ルール④:訂正方法は厳格に

これが最大の落とし穴かもしれません。書き間違えた箇所を二重線で消して印鑑を押す——これ、普段の書類ならOKですが、自筆証書遺言ではこの方法では訂正したことになりません

民法968条3項では、訂正には次の手順が必要とされています。

  1. 訂正の場所を指示する
  2. 「○字加入」「○字削除」などと変更した旨を付記する
  3. その付記の横に署名する
  4. 訂正した箇所に押印する

これを一つでも欠くと、訂正は無効になります。

実務上のおすすめ:書き間違えたら、新しい用紙で最初から書き直すのが一番確実です。私自身、勉強する中で「訂正のやり直しが一番ややこしい」と感じています。

保管も重要なポイント

書き終えたら、保管も大切です。自宅保管だと紛失・改ざん・隠匿のリスクがありますが、2020年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」を使えば、法務局で原本を預かってもらえます。手数料は1通3,900円。検認も不要になるので、利用を検討する価値は大いにあります。

ただし、保管制度を使うにはA4サイズ・余白指定などの様式ルールがあります。詳しくは法務省のホームページや、お近くの法務局でご確認いただくのがよいでしょう。

おわりに

自筆証書遺言は、手軽さと引き換えに「形式の厳しさ」を背負っている制度です。だからこそ、書く前にルールを知っておくことが、何よりの「無効防止策」になります。


“自筆証書遺言、書くなら知っておきたい4つのルールと落とし穴” への2件のフィードバック

  1. toku-sanのアバター
    toku-san

    遺言書については、ドラマで要件を満たしておらず無効になるという描写を目にすることがあります。

    訂正については、仕事(産廃処理業)で委託契約書を作成する際に、契約書の訂正で「○文字消除」と
    記載して経験があります。言われたとおりに訂正し、ここまですんの?と思いましたが、法律に
    定められていたことを民法で知りました。

    無知というのは怖いものです。

    1. fujika-asのアバター
      fujika-as

      ドラマの「無効になる遺言」描写、現実でも十分あり得る話なので笑えないんですよね。契約書の「◯文字削除」を実際に経験されているのは貴重ですね。形式的に見えて、後のトラブル防止という確かな理由がある。知っているかどうかで結果が大きく変わる、法律のそういう側面を象徴する部分だと思います。

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