これまでに「自筆証書遺言と公正証書遺言の違い」「自筆証書遺言の書き方と落とし穴」と、遺言書シリーズを書いてきました。今回はその完結編として、「公正証書遺言のメリット」を、もう少し踏み込んでお伝えしたいと思います。
「費用がかかるんやろ?」「公証役場まで行くの面倒くさそう」——たしかに、公正証書遺言にはそうしたハードルがあります。それでも、私が「迷ったら公正証書遺言をおすすめしたい」と感じる理由は、その安心感の大きさにあります。
メリット①:無効になるリスクがほぼゼロ
これが最大のメリットと言っていいでしょう。
公正証書遺言は、法律のプロである公証人が作成します。公証人は、裁判官・検察官・弁護士などの実務経験豊富な人の中から法務大臣が任命する、いわば「法律のスペシャリスト」。
自筆証書遺言で多発する「日付の書き漏れ」「訂正方法のミス」「押印忘れ」——こうした形式不備で遺言が無効になるリスクが、公正証書遺言ではほぼありません。
「遺言書を書いたのに、形式不備で無効でした」となったら、せっかくの想いが無に帰してしまいます。これを確実に防げるというのは、本当に大きな安心材料です。
メリット②:紛失・改ざんの心配がない
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されます。これがめちゃくちゃ強いんです。
自宅で保管していると、
- 災害で失われる
- 誰かに勝手に開封・改ざんされる
- そもそも見つけてもらえない
といったリスクがあります。公証役場に保管されていれば、これらの心配はありません。
しかも、全国どの公証役場からでも遺言の有無を検索できる仕組み(遺言検索システム)もあります。「親が遺言を残していたかどうか分からない」という時、相続人が公証役場に問い合わせれば確認できる——これも公正証書遺言ならではの強みです。
メリット③:検認手続きが不要
自筆証書遺言の場合、相続発生後に家庭裁判所の検認という手続きが必要です(法務局の保管制度を使った場合を除く)。これが意外と時間がかかり、1〜2ヶ月ほど待たされることも。
公正証書遺言なら、この検認が不要。遺言者が亡くなった後、すぐに不動産の名義変更や預金の解約手続きに着手できます。残されたご家族の負担を、大きく軽減できる仕組みです。
メリット④:体力的な負担が少ない
公正証書遺言は、遺言の内容を口頭で公証人に伝える形式が基本です。全文を自筆する必要がないため、「字を書くのが大変」「手が震える」といった高齢の方にも優しい制度です。
さらに、病気などで公証役場まで行けない場合は、公証人が自宅や病院、介護施設まで出張してくれます(別途、出張費・日当が必要)。「遺言を書きたいけど、外出できない」という方にも、道は開かれています。
【2025年10月の最新情報】手数料改正とデジタル化
実は2025年10月1日から、約20年ぶりに公証人手数料が改正されました。少額の取引や契約でも公正証書を作成しやすくなるよう手数料体系が見直され、ひとり親家庭や身寄りのない高齢者など、特に支援が必要な方には一定条件下で手数料が軽減される制度も設けられています。
さらに同日から、公正証書遺言のデジタル化もスタート。指定公証人の役場では、ウェブ会議システムを使ったリモート形式での作成や、電子サインによる作成にも対応できるようになりました。
ハードルが、少しずつ下がってきているのを感じます。
気になる費用の目安
参考までに、公証人手数料の例をご紹介します(2025年10月改正後)。
- 遺産総額1,000万円程度 → 手数料2万円台前後+遺言加算1万3,000円
- 遺産総額3,000万円程度 → 手数料3万円台前後+遺言加算1万3,000円
これに、証人手数料(1名5,000円〜)、正本・謄本代などが加わります。決して安くはありませんが、「家族が揉めずに、スムーズに相続手続きを進められる」ことの価値を考えると、十分元の取れる投資ではないかと、私は思います。
おわりに
公正証書遺言は、「お金と手間をかけてでも、確実に想いを残したい」という方にとって、最強の選択肢です。
特に、
- 不動産が遺産の中心となる方
- 相続人同士で意見が分かれそうな方
- 高齢で自筆が難しい方
- 「絶対に揉めさせたくない」と強く思われる方
こうした方には、自信を持っておすすめできる制度です。
ふじか行政書士事務所では、5月26日の証票交付以降、公正証書遺言の原案作成から証人立ち会いまで、サポートを行っていく予定です。「自分の場合はどうしたらええんやろ?」とお悩みの方は、業務開始後、お気軽にお声がけください。
このブログでは、引き続き相続・遺言の現場で役立つ情報を発信していきます。

コメントを残す