連載の第3回は、相続によって太陽光発電設備を引き継いだ場合を取り上げます。第1回でご説明したとおり、太陽光の名義変更は「経済産業省」「電力会社」「登記」という別々の手続きの束です。そして相続は、第2回で扱った売買・生前贈与とは、必要書類だけでなく手続きの種類そのものが異なります。ここを取り違えると、電子申請システムで最初の一歩から行き止まりになります。
相続は「変更認定申請」ではなく「事後変更届出」
資源エネルギー庁が公表している「変更内容ごとの変更手続の整理表」(2026年4月1日更新)では、事業計画の変更手続きを、変更認定申請・事前変更届出・事後変更届出・卒FIT事前変更届出の4種類に整理しています。
このうち、第2回で見たとおり事業譲渡(生前贈与を含む)は「変更認定申請」ですが、相続による場合は「事後変更届出」として整理されています。名義が変わるという結果は同じでも、通る道が違うということです。
この違いは実務上、次のように現れます。
- 変更認定申請は事前の承認手続きであり、認定までに相応の審査期間を要します
- 相続は事後の届出であるため、認定審査を経て通知書の発行を待つ、という流れにはなりません
- 10kW以上の設備(屋根設置価格適用以外)で問題となる説明会・事前周知措置は、変更認定申請に伴うものとして整理されています
ただし、「届出だから簡単」という話ではありません。むしろ相続は、添付書類の収集が譲渡よりはるかに重い手続きです。
必要となる主な書類
整理表が挙げている、相続による場合の添付書類は次のとおりです。
- 被相続人(亡くなられた方)の戸除籍謄本(附票を含む。附票がない場合は住民票の除票でも可)
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 法定相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書、または相続人全員の同意書
- 土地の取得を証する書類等
被相続人の戸除籍謄本と法定相続人全員の戸籍謄本については、法務局が発行する法定相続情報一覧図で代えることができます。相続手続き全体で戸籍一式を何度も使うことになりますので、早い段階で取得しておく価値があります。
なお、公的機関が発行する書類は、申請(届出)日より3か月前から当該日までに発行されたものに限られます。ただし被相続人の戸除籍謄本はこの3か月の制限から除かれています。ここは実務上ありがたい例外です。
最大の落とし穴 ― 協議書に「太陽光発電設備」が書かれていない
この連載でもっともお伝えしたいのがこの点です。
第2回でも触れたとおり、太陽光パネルは建物の附属設備として当然に扱われるものではありません。相続の場面では、これがより深刻な形で問題になります。遺産分割協議書に「自宅建物および土地は長男が相続する」とだけ書いてあっても、その建物に載っている太陽光発電設備が相続の対象に含まれているかどうかが、書面から確認できない状態になるのです。
整理表も、相続の際は建物と別に明示する、あるいは太陽光パネルを含むすべてを相続対象とする記載にするなど、相続対象に発電設備が含まれていることが確認できる書き方が必要である、と注意を促しています。
厄介なのは、この不備が判明するのがたいてい遺産分割協議が終わり、相続人が各地に散った後だという点です。作り直すには、再び相続人全員の署名と実印、そして印鑑証明書が要ります。遺産分割協議書を作成する段階で発電設備の記載を織り込んでおけば、この手戻りは丸ごと避けられます。
遺言がある場合
公正証書遺言がある場合について、整理表は、届出者が相続対象となる発電設備の所有権を有することが明らかであり、認定審査上適切な審査が行えることが確認できる場合には、公正証書遺言により審査を行うこともある、としています。
「遺言さえあれば遺産分割協議書は不要」と一律に言い切れるものではなく、あくまで遺言の記載内容次第です。この点でも、発電設備が特定できる記載になっているかどうかが分かれ目になります。
電力受給契約の名義変更
第2回と同様、こちらは別の手続きです。ただし相続の場合、電力会社に提出するのは変更認定通知書ではなく、事後変更届出の受理日が分かるものになります。姫路・播磨エリアであれば関西電力送配電への手続きです。
税務・登記との関係
売電収入がある場合、被相続人の準確定申告が必要になることがあります。相続税の申告と併せて、税額に関わる部分は税理士の領域です。また、野立ての設備で土地を相続した場合は相続登記が必要となり、こちらは令和6年4月1日から義務化されています(司法書士の領域)。当事務所では、それぞれの連携先とともに進める形をとっています。
次回予告
最終回となる第4回は、実際に多い失敗例と、どこから専門家に任せるべきかの判断基準を整理します。設備IDが分からない、旧所有者と連絡が取れない、販売店が代行してくれると言っている ― こうしたご相談への考え方をまとめる予定です。
ご相談について
ふじか行政書士事務所(兵庫県姫路市飾磨区富士見ケ丘町/登録番号 第26301597号)では、太陽光発電設備の名義変更手続きと、遺産分割協議書の作成を承っております。相続で設備を引き継がれた方はもちろん、これから遺産分割協議書を作成される方も、発電設備の記載でお困りの際はお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年7月時点で公表されている資料に基づいています。制度の運用は変更されることがありますので、実際の手続きにあたっては最新の情報をご確認ください。

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