私道も山林も見落とさない 2026年2月開始「所有不動産記録証明制度」の使い方と限界


前回は、2027年3月31日という相続登記の期限についてお話ししました。今回はその第一歩、「実家にどれだけ不動産があるのかを確定させる」という作業です。

相続登記が一度で終わらない原因の多くは、ここにあります。自宅の土地と建物は登記したものの、あとから山林や私道が出てきて、また一から書類を集め直す――実務ではよくある話です。2026年2月に新しい制度が始まり、この取りこぼしをかなり防げるようになりました。

なぜ、不動産は取りこぼされるのか

見落とされやすいのは、決まって次のようなものです。

  • 私道の共有持分――自宅前の道路を近隣の方と何十分の一ずつ共有しているケース。固定資産税が非課税で、通知が届かないため気づきにくい
  • 山林・農地――先代から引き継いだまま、現地を見たこともない土地
  • 他市町村にある不動産――姫路市内は把握していても、たつの市や隣県の物件までは分からない
  • マンションの敷地権や集会所の持分

これまでは、市町村ごとに名寄帳を取り寄せて調べるのが基本でした。ただし名寄帳はその市町村の分しか分からず、しかも固定資産税の課税台帳がもとになっているため、非課税の物件が載らないことがあります。「どこの市町村に何があるか分からない」という状態には、そもそも対応できませんでした。

2026年2月、所有不動産記録証明制度が始まりました

所有不動産記録証明制度は、ある人が所有権の登記名義人となっている不動産を全国分まとめて一覧にした証明書を、法務局が交付してくれる制度です。2026年(令和8年)2月2日から運用が始まりました。

相続の実務にとって、これは大きな変化です。市町村をまたいで散らばった不動産を、一度の請求で拾い上げられる可能性が生まれたからです。

請求できる人

  • 所有権の登記名義人本人(法人を含む)
  • その相続人その他の一般承継人
  • これらの方から委任を受けた代理人

請求方法と手数料

全国どの法務局・地方法務局(支局・出張所を含む)でも請求でき、窓口・郵送・オンラインから選べます。手数料は検索条件1件につき1通あたり、書面請求で1,600円、オンライン請求のうえ郵送で受け取る場合が1,500円、窓口で受け取る場合が1,470円とされています。

相続人が請求するときに効いてくるもの

亡くなった方の分を相続人が請求する場合、本人確認書類に加えて、登記名義人との相続関係を証する情報が必要になります。ここで戸籍謄本一式を添えてもよいのですが、法定相続情報一覧図の写しがあれば、それで足ります。

相続手続きでは、金融機関、法務局、年金事務所と、同じ戸籍一式を何度も出すことになります。法定相続情報一覧図を最初に作っておくと、この場面でもそのまま使えます。当事務所が相続のご依頼でまずこの一覧図をおすすめしているのは、こうした理由からです。

ただし、万能ではありません

ここは正直にお伝えしておきます。法務省自身が、抽出される不動産の網羅性には限界があると明示しています。

  1. 氏名・住所で検索する仕組みのため、登記記録上の住所が古いままだと、その不動産が抽出されない可能性があります。転居を繰り返した方ほど注意が必要です
  2. 登記簿がコンピュータ化されていない不動産は、そもそも検索の対象外です
  3. 同姓同名の別人の不動産が混ざって抽出されることもあります

つまり、この証明書は「これで全部だ」と言い切れるものではなく、調査の出発点と位置づけるのが正しい使い方です。1番目の限界については、前回触れた住所等変更登記の義務化(2026年4月1日施行)とあわせて、ご本人が元気なうちに登記上の住所を現住所に直しておくことが、そのまま次の世代への備えになります。

結局、どう進めるのがよいか

実務としては、次の組み合わせが現実的です。

  1. 所有不動産記録証明で、全国分の当たりをつける
  2. 出てきた市町村ごとに名寄帳を取り、突き合わせる
  3. 権利証(登記識別情報)、固定資産税の納税通知書、古い契約書など、手元の資料と照合する

3つを重ねて、ようやく「これで全部」と言える状態になります。当事務所では、この財産調査から戸籍の収集、相続関係説明図・遺産分割協議書の作成までを一括してお引き受けしています。登記申請の代理は司法書士の業務ですので、書類が整った段階で連携する司法書士へおつなぎします。

次回予告

第3回は、期限までに遺産分割がまとまらない場合の受け皿である相続人申告登記を取り上げます。義務は果たせるのに権利は移らない――この制度の使いどころと限界を整理します。


姫路市飾磨区のふじか行政書士事務所では、相続手続きのご相談をお受けしています。「どこに何があるのか分からない」という段階からで構いません。姫路市・たつの市・太子町など播磨地域を中心に対応しております。

※本記事は2026年8月時点の制度にもとづく一般的な解説です。手数料や必要書類は変更される場合がありますので、請求前に法務局にご確認ください。登記申請の代理は司法書士、税務に関するご相談は税理士の業務となります。


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