「亡くなったお父さんの遺言で、執行者として○○さんが指定されていました。これから手続きを進めますので、ご協力お願いします」
ある日突然、こんな連絡が来たら、ちょっと身構えますよね。「協力って、何を?」「勝手に進められたら困るんやけど……」と思って当然です。
相続人の立場からすると、遺言執行者は「いきなり登場して、いろいろ仕切る人」に見えがちです。でも、対立する関係ではありません。役割分担を理解しておけば、手続きはずいぶんスムーズに進みます。
大前提 執行者がいる間、相続人は財産に勝手に手を出せません
ここが一番大事なところです。
遺言執行者がいる場合、相続人は遺言の執行を妨げる行為(財産の処分など)をすることができません(民法1013条1項)。違反すると、その行為は無効になります(同条2項)。
つまり「先に預金を下ろしておこう」「不動産を自分名義に変えておこう」「形見分けで車を持って帰ろう」──こういうのは、執行者が動いている間は基本NGです。「うちの親父の財産やのに」と思われるかもしれませんが、相続人が先回りすると話がややこしくなります。
相続人がやるべきことは、意外とシンプル
執行者がいる場合、相続人の動きは大きく3つです。
①通知・財産目録を確認する
執行者から届く通知と財産目録は、内容を必ず確認してください。「こんな預金あったかな」「不動産が抜けてないか」など、気づいた点はすぐ伝えましょう。
②書類提供に協力する
戸籍謄本、印鑑証明などを求められたら、速やかに対応するのが手続きを早める近道です。
③遺留分が侵害されていないか確認する
遺言の内容が偏っている場合、他の相続人の遺留分が侵害されている可能性があります。遺留分侵害額請求には時効(1年)があるので、気になる場合は早めに専門家に相談してください。
執行者が信用できないと感じたら
「報告が来ない」「身内びいきな進め方をしている気がする」 そう感じたら、我慢する必要はありません。
執行者には任務遂行の報告義務があります(民法1012条3項、645条準用)。質問しても答えない、報告書を出さないという状況なら、家庭裁判所に解任の申立てもできます(民法1019条1項)。
ただ、いきなり解任に走るより、まずは書面で説明を求めるのが先です。誠実な対応がなければ、専門家に相談しましょう。
まとめ 「待つ」と「確認する」のバランス
執行者がいる相続では、相続人の役割は「執行者の仕事を見守りつつ、必要なところでしっかり関わる」というスタンスがちょうどいいです。
勝手に動かない。でも、放っておかない。通知が来たら内容を確認する。疑問があれば質問する。書類を求められたら早めに出す。
これだけで、相続手続きの体感スピードはまったく変わります。一人で抱え込まず、早めに専門家に相談されることをおすすめします。
次回(最終回)は、「専門家に頼むという選択 行政書士・弁護士・司法書士、それぞれの守備範囲」をお届けします。「結局、誰に頼めばええの?」という素朴な疑問にお答えします。
ふじか行政書士事務所では、相続人の立場からのご相談もお受けしています。「執行者から連絡が来たけど、どう動いたらいいか分からない」というレベルからで構いません。お気軽にお問い合わせください。

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