遺言執行者に指定された人へ 断ることもできる?引き受けたら何をする?


「お父さんの遺言書を開けたら、執行者として私の名前が書いてあったんです」
「亡くなった叔父から、生前に『遺言の執行を頼む』と言われていた」

こうした場面は、決して珍しいことではありません。

遺言執行者に指定されると、その瞬間から重要な役割を担うことになります。とはいえ、多くの方は法律の専門家ではありません。「何をすればいいのか分からない」「そもそも引き受けないといけないのか」と戸惑うのは当然のことです。

まず大前提 指定されても、断ることはできます

「故人の遺志だから、断るのは申し訳ない」
そう感じる方は多いですが、まず安心していただきたいのは、遺言執行者への就任は強制ではないということです。

ただし、相続人などから「就任するかどうか、はっきりさせてほしい」と催告された場合、相当の期間内に返事をしないと承諾したものとみなされるので注意してください(民法1008条)。

「平日に動けない」「相続人との関係性が複雑」「遠方に住んでいる」 こうした事情があれば、無理に引き受ける必要はありません。その場合は、家庭裁判所に申し立てて、別の人を選任してもらうことになります。

いったん引き受けたら、辞めるのは難しい

ここが大事なところです。

一度就任を承諾すると、辞任には正当な事由が必要で、しかも家庭裁判所の許可が要ります(民法1019条2項)。「やっぱり面倒だから」では辞められません。

ですから、引き受けるかどうかは最初の段階でじっくり考えるべきです。財産の規模、相続人の人数と関係性、不動産など複雑な財産の有無、自分の生活との両立 このあたりを見極めてから判断しましょう。迷ったら、引き受ける前に専門家に相談するのがおすすめです。

引き受けると決めたら、まずやるべき3つのこと

①就任の通知
遺言執行者になったことを、すべての相続人に知らせます。2019年の民法改正で、これは執行者の義務として明文化されました(民法1007条2項)。

②財産目録の作成
預貯金、不動産、株式、保険、負債まで含めて、故人の財産を洗い出し、財産目録を作って相続人全員に交付します(民法1011条)。実はこれがいちばん時間がかかる作業です。

③遺言内容の実行
預貯金の解約、不動産の名義変更、株式の名義書換、遺贈の実行など、遺言書の内容に沿って手続きを進めます。

大事なのは「公平」と「記録」

執行者として動くうえで、特に気をつけたいのは2点。

勝手に動かない 相続人への通知前に財産を動かしたり、一部の相続人にだけ情報を伝えたりすると、後々トラブルになります。

記録を残す いつ、誰に、何を連絡したか。どんな書類を取り寄せたか。すべて記録しておきましょう。「聞いてない」と言われたとき、記録が自分を守ってくれます。

不安なら、専門家と一緒に進めるという手も

「引き受けたいけど、自分一人では不安……」という方も多いはずです。

その場合、執行者として就任したうえで、実際の手続きの一部を行政書士などの専門家に任せる方法があります(民法1016条)。執行者の責任は引き受けつつ、煩雑な手続きは専門家に委ねる形です。費用はかかりますが、平日に動けない方や、遠方の手続きが必要な方には現実的な選択肢になります。

まとめ 「引き受ける前に考える」が一番大事

遺言執行者の役割は、決して軽いものではありません。でも、準備して進めれば、こなせないものでもありません。

大切なのは、引き受ける前にじっくり考えること。そして引き受けると決めたら、透明性を保ちながら着実に進めることです。

次回(第3回)は、また立場を入れ替えて「相続人になったあなたへ──遺言執行者がいる場合、自分は何をすればいい?」をお届けします。

姫路市飾磨区にて、ふじか行政書士事務所の開業準備を進めています。相続・遺言まわりのご相談に対応できるよう準備中です。開業後はお気軽にお問い合わせください。


“遺言執行者に指定された人へ 断ることもできる?引き受けたら何をする?” への3件のフィードバック

  1. toku-sanのアバター
    toku-san

    的外れな疑問かもしれないことを承知の上で・・・
    遺言執行者が行政書士にをゆだねる場合、当然委任契約締結となるかと思いますが、
    相続人と遺言執行者間の関係はどうなるのでしょうか?
    生前に執行者を指定する場合、委任契約となるのでしょうか?
    死後、遺言書にて記載があった場合は諾成契約にはなり得えないため、辞退もできる
    ということなのでしょうか?

    1. fujika-asのアバター
      fujika-as

      「死後、遺言書にて記載があった場合は諾成契約にはなり得えないため、辞退もできる」というご理解はその通りかと。
      生前に何の打診もなく、遺言書を開けたら自分の名前が書いてあった、というケースでは、指定された者と遺言者の間に契約関係は一切ありません。遺言は単独行為で、指定は遺言者の一方的な意思表示にすぎないからです。
      これらのことより、指定された者は就職を拒絶できます。民法1007条1項が「遺言執行者は、その就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない」と規定しているのは、裏返すと承諾しなければ任務は発生しないということです。

      1. toku-sanのアバター
        toku-san

        合格して随分知識が抜けてしまっていたので
        再認識できましたw

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