親が亡くなり、相続人の皆さんで遺産の分け方が決まった。次に必要になるのが「遺産分割協議書」です。
「自分で作れるの?」「専門家に頼むものなの?」と迷う方もいらっしゃると思います。この記事では、自分で作るときに知っておきたい注意点をお伝えします。
目次
遺産分割協議書とは
相続人全員で話し合って決めた遺産の分け方を、書面にしたものです。決まった書式はなく、自分で作ることもできます。法務局の相続登記の案内にも、遺産分割協議書のイメージが載っています。
この書面は、決めた内容の記録になるだけでなく、次のような手続きで出すことになります。
- 土地や建物の相続登記(法務局)
- 預金の解約・払戻し(銀行)
- 車やバイクの名義変更
- 太陽光発電の名義変更
- 相続税の申告(必要な場合)
なお、相続人が一人だけの場合や、遺言の内容どおりに手続きする場合は、協議書が要らないこともあります。
手続き先で「この協議書では受け付けられません」と言われないように、作る前に次の点を押さえておきましょう。
注意点1:相続人「全員」が加わっていること
遺産分割の話し合いは、相続人全員で行う必要があります。一人でも欠けていると、その協議書は使えません。
「相続人はこの人たちだけ」と思っていても、亡くなった方の戸籍を生まれたときからたどると、知らなかった相続人が見つかることがあります。協議書を作る前に、戸籍で相続人を確かめておくことが大切です。
注意点2:署名と実印、印鑑証明書
協議書には、相続人全員が署名し、実印(市区町村に登録した印鑑)を押すのが一般的です。法務局の相続登記では、相続人全員が実印を押し、印鑑証明書をつけることになっています(登記を申請する相続人の印鑑証明書は不要です)。
印鑑証明書の有効期限は、出す先によって違います。法務局の相続登記では期限がありませんが、たとえば太陽光の名義変更では、発行から3か月以内のものが必要です。手続きの順番も考えて、取る時期を決めましょう。
協議書が何枚かになるときは、ページのつなぎ目に相続人全員の実印を押しておく(契印)と、あとから差し替えられていないことを示せます。
注意点3:財産は、だれが見ても分かるように書く
「自宅は長男」「預金は長女」のような書き方では、手続き先で受け付けてもらえないことがあります。財産は、特定できるように書きます。
- 土地・建物:登記簿(登記事項証明書)のとおりに、所在・地番・家屋番号などを書く
- 預金:銀行名、支店名、預金の種類、口座番号を書く
- 車:車検証の登録番号や車台番号を書く
- 太陽光発電設備:家とは別に、太陽光発電設備を相続することをはっきり書く
太陽光は、家の屋根に付いていても、家と一緒に相続したとは扱ってもらえません。くわしくは「太陽光の名義変更、相続のときに必要な書類は?」でご紹介しています。
また、あとから別の財産が見つかったときに、だれが受け取るかも決めて書いておくと、話し合いをやり直さずに済みます。
注意点4:相続人に、こんな方がいるとき
次のような場合は、協議書を作る前に、家庭裁判所での手続きが必要になることがあります。
- 未成年の相続人がいて、親も相続人のとき:親が子の代わりに話し合いに加わることができず、家庭裁判所に「特別代理人」を選んでもらう必要があります
- 認知症などで、判断する力が十分でない方がいるとき:成年後見などの手続きが必要になることがあります
- 連絡がとれない、行方が分からない方がいるとき:その方の財産を管理する人を、家庭裁判所に選んでもらう方法があります
注意点5:話し合いに期限はないけれど
遺産分割の話し合いには、いつまでという期限はありません。ただし、亡くなってから10年を過ぎると、生前に受けた贈与や、介護などの貢献を考えた分け方を、原則として主張できなくなります(2023年4月からのルール)。
また、土地や建物の相続登記には、相続で取得したことを知ってから3年以内という期限があります。時間がたつほど相続人が増えて話し合いが難しくなることもあるので、早めにまとめておくのがおすすめです。
自分で作るか、頼むか
相続人が少なく、財産も分かりやすい場合は、自分で作ることもできます。法務局の案内などを参考にしてください。ただし、法務局では、遺産の分け方や協議書の作り方の相談には応じていません。
一方で、次のような場合は、専門家に頼むと安心です。
- 相続人が多い、遠方に住んでいる
- 財産が多い、銀行がいくつもある
- 不動産のほかに、車や太陽光などの手続きもある
- 平日に何度も役所や銀行に行くのが難しい
ふじか行政書士事務所では、戸籍を集めて相続人を確かめるところから、遺産分割協議書の作成、そのあとの預金や車、太陽光の名義変更までをお引き受けしています。遠方の相続人の方とは、郵送で署名・押印をいただけます。
料金は相続手続きのページをご覧ください。初回のご相談とお見積りは無料です。
なお、相続人の間で分け方について争いがある場合は、弁護士の業務になります。当事務所がお手伝いできるのは、全員の考えがまとまっている場合の書類づくりです。
銀行の手続きは「亡くなった親の銀行口座、どうする?」、手続き全体の順番と期限は「姫路市で家族が亡くなったときの手続き一覧」にまとめています。
参考にした公的資料
- 民法(e-Gov法令検索)
- 不動産登記法(e-Gov法令検索)
- 法務局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」令和6年9月版(PDF)
- JPEA代行申請センター「相続による名義変更の必要書類」
いずれも2026年10月31日に確認しました。
※本記事は、民法、法務局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」(令和6年9月版)などにもとづく一般的な説明です。必要な書類や書き方は、手続き先によって異なります。相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人の間の争いは弁護士の業務です。
