ここまで3回にわたって、2027年3月31日という期限、不動産の洗い出し、そして間に合わないときの受け皿を見てきました。第4回は、いよいよ実際の作業です。
相続手続きでほとんどの方がつまずくのは、登記そのものではありません。その手前にある、戸籍を集めて相続人を確定させ、遺産分割協議書にまとめるという工程です。ここが全体の時間の大半を占めます。
なぜ「出生から死亡まで」すべてなのか
相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を切れ目なく集めます。死亡の記載がある戸籍だけでは足りません。
理由は、相続人を確定させるためです。前の婚姻でお子さんがいた、認知したお子さんがいた、幼くして亡くなったきょうだいがいた――こうした事実は、古い戸籍まで遡らないと分かりません。ご家族が把握していなかった相続人が出てくることは、実務では現実にあります。相続人が一人でも欠けた遺産分割協議は無効ですから、この確認を省くことはできません。
戸籍は、婚姻、転籍、法改正による様式変更などのたびに新しく作り直されます。そのため一人の生涯分でも、本籍地をいくつもまたいで5通、10通と必要になることが珍しくありません。
2024年3月に始まった「広域交付」は、たしかに便利です
2024年(令和6年)3月1日、改正戸籍法が施行され、戸籍謄本等の広域交付が始まりました。本籍地が全国各地にあっても、最寄りの市区町村の窓口1か所でまとめて請求できる仕組みです。
姫路市にお住まいで、本籍が九州にあり、その前は東北にあった――というような場合、以前は本籍地ごとに郵送でやり取りする必要がありました。それが窓口一度で済むようになったのは、大きな前進です。
ただし、広域交付には4つの制約があります
ここを知らずに期待すると、必ず戸惑うことになります。
- 市区町村の戸籍担当窓口に、請求する本人が出向く必要があります。郵送や代理人による請求はできません
- 請求できるのは、本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属に限られます。きょうだいの相続では使えません
- コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外です。古い相続ほど、この壁に当たります
- 一部事項証明書や個人事項証明書は請求できません
とくに1番目は重要です。専門家に依頼した場合、その専門家が広域交付を使って代わりに集めることはできません。この制度は、あくまでご本人が動く前提の仕組みです。
では、依頼するとどうなるのか
行政書士をはじめとする一定の資格者には、業務上必要な場合に戸籍を請求できる職務上請求という手段があります。広域交付は使えませんが、本籍地の市区町村へ順に郵送で請求していくことで、ご本人が窓口に何度も足を運ぶことなく収集を進められます。
ただし、時間はかかります。1つの市区町村とのやり取りに1〜2週間、そこで判明した前の本籍地へまた請求、という繰り返しです。古い相続で本籍地が何度も移っていれば、揃うまでに数か月を見ておく必要があります。
2027年3月31日の期限に対して「まだ半年以上ある」と感じられるかもしれませんが、この工程を差し引くと、余裕はそれほどありません。
戸籍が揃ったら、遺産分割協議書へ
相続人が確定したら、全員で話し合い、その結果を遺産分割協議書にまとめます。作成にあたっての要点は次のとおりです。
- 相続人全員が合意していること。一人でも欠けていれば無効です
- 相続人全員が署名し、実印を押したうえで、それぞれの印鑑証明書を添えること
- 不動産は、住所ではなく登記事項証明書のとおりに、所在・地番・地目・地積、建物なら家屋番号まで正確に記載すること。ここが不正確だと、登記の場面で通りません
- あとから判明した財産の扱いを定めておくこと。第2回でお話ししたとおり、私道や山林はあとから出てきます
協議書を作る前に、止まってしまうケース
次のような事情があると、協議書の作成に進む前に別の手続が必要になります。
- 相続人に未成年者がいて、その親も相続人である場合――家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます
- 相続人に判断能力が十分でない方がいる場合――成年後見人等の選任が必要になります
- 行方が分からない相続人がいる場合――不在者財産管理人の選任などを検討します
いずれも家庭裁判所への申立てが必要で、当事務所では取り扱えません。該当しそうな場合は、早い段階で司法書士または弁護士にご相談ください。時間がかかる手続ですので、思い当たる方は今すぐ動かれることをおすすめします。
次回予告
最終回となる第5回は、「姫路・飾磨で、誰に何を頼むか」です。行政書士、司法書士、税理士、弁護士。相続で登場する4つの資格の役割分担と、依頼の順番を整理します。
姫路市飾磨区のふじか行政書士事務所では、相続人の調査(戸籍の収集)、相続財産の調査、相続関係説明図および遺産分割協議書の作成を承っています。「戸籍を取り寄せてみたが、途中で行き詰まった」というご相談も歓迎します。姫路市・たつの市・太子町など播磨地域を中心に対応しております。
※本記事は2026年8月時点の制度にもとづく一般的な解説であり、個別の事案に対する助言ではありません。登記手続の代理・法務局に提出する書類の作成およびこれらについてのご相談は司法書士、家庭裁判所に提出する書類の作成は司法書士または弁護士、相続税に関することは税理士、相続人間に争いのある事案は弁護士の業務となります。

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