売買・生前贈与で太陽光の名義を変えるとき ― 手続きの種類と順番
前回は、太陽光発電の名義変更が「経済産業省」「電力会社」「登記」という別々の手続きの束であることをご説明しました。第2回となる今回は、相談件数がもっとも多い譲渡(売買・生前贈与)のケースを取り上げます。
中古の太陽光発電所を購入した、太陽光パネル付きの中古住宅を買った、親が設置した設備を生前のうちに子へ渡しておきたい。入口は違いますが、行政手続きとしての流れは共通しています。
まず押さえること ― 認定だけを切り離して売買することはできない
FIT認定は、発電設備と発電事業に紐づいたものです。認定だけを独立した権利として取り出し、第三者に売り渡すという扱いはできません。発電事業の譲渡に伴って、認定事業者を変更する手続きを行い、あらためて認定を受けるという建付けになります。
したがって、契約が済んだから名義が自動的に移る、ということはありません。契約はスタートラインにすぎず、そこから行政手続きが始まります。
手続きの種類 ― 譲渡は「変更認定申請」
資源エネルギー庁が公表している「変更内容ごとの変更手続の整理表」(2026年4月1日更新)では、事業譲渡等の場合(生前贈与等も含む)は「変更認定申請」として整理されています。事後の届出ではなく、事前の承認手続きだという点が最大の特徴です。
なお、調達期間が終了した卒FIT設備の場合は「卒FIT事前変更届出」となります。ご自身の設備がどちらなのかは、電子申請システム上の認定状態で確認できます。
手続きの順番
ステップ1:譲渡契約を締結する
売買契約書、あるいは贈与契約書を作成します。後の申請でこの契約書を添付するため、当事者の氏名・住所、設備の特定(設備ID・所在地・出力)、譲渡の内容が明確である必要があります。
家族間の譲渡などで契約書を締結しない場合は、契約書に代えて「譲渡証明書」(資源エネルギー庁が様式を公表しています)を添付する扱いになります。生前贈与では、こちらを使う場面が多くなります。
ステップ2:事業計画変更認定申請(経済産業省)
再生可能エネルギー電子申請システムから、設備IDを指定して申請します。事業者の実質的な主体を変更する場合は、変更前に変更認定申請を行うのが原則です。契約の効力発生時期と申請のタイミングをどう設計するかは、実務上もっとも気を遣う部分です。譲渡契約に停止条件が設けられている場合は、その条件が成就したことを確認できる資料の提出も求められます。
審査期間について、資源エネルギー庁は50kW以上の設備の変更認定申請について、申請から認定まで3か月程度としています(書類に不備がある場合を除く)。受任時には必ず時間の見込みをご説明しています。
ステップ3:電力受給契約の名義変更
ステップ2とは別の手続きです。姫路・播磨エリアであれば関西電力送配電への手続きになります。名義変更に伴って特定契約の変更が必要になる場合、電力会社には「変更認定通知書の写し」または「事前・事後変更届出の受理日が分かるもの」を提出する必要があるため、実務上は経済産業省の手続きの完了を待って動くことになります。
主な必要書類
整理表が挙げている、事業譲渡等の場合の添付書類は次のとおりです。
- 譲渡契約書、または譲渡証明書
- 法人の場合は双方の履歴事項全部証明書/個人の場合は双方の住民票の写し、住民票記載事項証明書または戸籍謄(抄)本のいずれか
- 契約当事者双方の印鑑証明書
- 土地の取得を証する書類等(土地登記簿謄本、不動産売買・賃貸借契約書等)
- 事業実施体制図
- 関係法令手続状況報告書
- 代行者に依頼する場合は委任状
印鑑証明書は、申請日より3か月前から当該申請日までの間に発行された原本に限られます。ただしGビズIDによる認証を行う場合は省略できることがあります。また、10kW以上の設備(屋根設置価格適用以外)では、変更内容や設置場所により、変更認定申請の前に説明会や事前周知措置の実施が必要となる場合があります。これを見落とすと申請の前提が崩れます。
見落としやすい点 ― 太陽光パネルは建物の附属設備ではない
太陽光パネルは、建物の附属設備として当然に扱われるものではありません。整理表も、事業譲渡の際は建物と別に明示することが必要である、と注意を促しています。
太陽光パネル付きの中古住宅の売買で、契約書に建物と土地しか書かれていない、というのは実際によくあります。この場合、発電設備が譲渡の対象に含まれていることを書面から確認できません。契約書を作る段階で織り込んでおけば済む話ですので、売買の前にご相談いただくのが確実です。
売買と生前贈与で異なる点
行政手続きの流れ自体は共通ですが、その周辺で大きく変わるのが税務です。生前贈与では贈与税が、売買では譲渡所得の課税が問題になります。また、設備の設置に補助金を受けている場合、処分制限期間内の譲渡にはあらかじめ交付元の承認が必要となることがあります。
税額の計算そのものは税理士の領域ですので、当事務所では連携先とともに進める形をとっています。
「自分でやろうとして止まった」というご相談が増えています
電子申請は一見すると入力するだけに見えますが、実際には設備ID・事業者ID・登録者IDの整理、添付書類のPDF・ZIP化、印鑑証明書の有効期限の管理といった細かな要件が積み重なっています。不備があれば差し戻しとなり、そのたびに時間が失われます。
なお、令和8年1月1日に施行された改正行政書士法(令和7年法律第65号)により、法第19条第1項に「他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず、報酬を得て」という文言が追加されました。「手数料」「コンサルタント料」「商品代金」といった名目のいかんを問わず、対価を受け取って、業として官公署に提出する書類を作成することは行政書士法違反となることが、条文上明確にされたものです。あわせて、違反行為が法人の業務として行われた場合に法人にも罰金刑が科される両罰規定も整備されました。
これは新たに禁止行為が加わったというより、従来から違法であった行為の解釈を明示したもの、と説明されています。とはいえ、機器代金や工事代金に含める形で名義変更を代行してきた事業者にとっては、整理が必要な状態にあることに変わりはありません。
次回予告
第3回は、相続によって太陽光発電設備を承継したときの手続きを取り上げます。実は相続は、譲渡とは手続きの種類そのものが異なります。お盆の帰省で実家の設備の話題が出る前に、ぜひご一読ください。
ご相談について
ふじか行政書士事務所(兵庫県姫路市飾磨区富士見ケ丘町/登録番号 第26301597号)では、太陽光発電設備の名義変更手続きを承っております。姫路・播磨エリアはもちろん、手続きの性質上、全国どちらからのご依頼にも対応可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年7月時点で公表されている資料に基づいています。制度の運用は変更されることがありますので、実際の手続きにあたっては最新の情報をご確認ください。

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