太陽光発電設備の持ち主が亡くなっても、発電は止まりません。晴れた日にはこれまでどおり発電し、売電収入が発生し続けます。
一方で、相続人どうしの話し合い(遺産分割協議)は、すぐにまとまるとは限りません。戸籍を集めて相続人を確定し、財産を調べ、全員の合意を取りつけるまでには、数か月かかることもあります。
では、その間に発生した売電収入は、だれのものになるのでしょうか。
以前の記事「相続で太陽光発電設備を引き継いだとき」では手続の種類をお伝えしました。今回は、手続とあわせて考えておきたいお金の話です。
目次
亡くなる前の売電収入は、遺産分割の対象です
まず、亡くなる前に支払われ、故人の預金口座に入っている売電収入です。
これは、すでに「預金」になっています。最高裁判所は平成28年12月19日の決定で、相続された普通預金などは、相続人の相続分に応じて当然に分かれるのではなく、遺産分割の対象になると判断しました。
したがって、口座に入っている売電収入は、ほかの預金と同じように、遺産分割協議でだれが受け取るかを決めることになります。
亡くなった後の収入には、参考になる最高裁判決があります
次に、亡くなった後、遺産分割が終わるまでの間に発生する売電収入です。
これを考えるうえで参考になるのが、アパートなどの賃料についての最高裁判所の判決(平成17年9月8日)です。この判決は、相続開始から遺産分割までの間に、遺産である賃貸不動産から生じた賃料について、次のように判断しました。
- この間の賃料は、遺産とは別の財産である
- 各相続人が、相続分に応じて確定的に取得する
- 後で遺産分割をしても、その影響を受けない
たとえば、アパートを長男が相続すると遺産分割で決めても、それまでの間の家賃が、さかのぼって長男だけのものになるわけではない、ということです。
この判決は賃料について判断したもので、太陽光の売電収入について直接判断したものではありません。ただ、売電収入も、相続が始まった後に遺産である設備から生じるお金という点では、賃料と似ています。太陽光を相続するときにも、この判決の考え方を知っておくことが役に立ちます。
「設備をもらう人が、それまでの収入ももらう」とは限りません
設備を引き継ぐ相続人が「設備は自分のものになったのだから、亡くなってからの売電収入も自分のもの」と考え、ほかの相続人が「分割が決まるまでの分は、みんなで分けるべきだ」と考えることもあり得ます。
あいまいなままにしておくと、あとで食い違いが表に出てくることがあります。
遺産分割協議書で、売電収入の扱いも決めておく
解決の近道は、相続人全員で話し合い、分割が終わるまでの売電収入をどう扱うかも決めておくことです。相続人全員が合意すれば、遺産分割協議の中で、この期間の売電収入の分け方をあわせて決めることができます。
たとえば、次のような点です。
- 分割が終わるまでの売電収入を、だれが管理するか
- その間の収入を、設備を引き継ぐ人が取得するのか、相続分に応じて分けるのか
- パネルの清掃や草刈り、保険料など、その間にかかった費用をだれが負担するか
名義の手続は、2か所に分かれています
売電収入を新しい持ち主が受け取るためには、名義の手続も必要です。
- FIT・FIPの認定の名義変更:国(資源エネルギー庁)の手続です。
- 売電先の電力会社との契約の名義・振込口座の変更:電力会社ごとの手続です。たとえば関西電力送配電では、相続による契約名義の変更や振込口座の変更の申込書が用意されています。
窓口が別ですので、それぞれに手続が必要です。
税金と争いごとは、それぞれの専門家へ
相続後の売電収入には、税金の申告が関係することがあります。税金の扱いは税理士の業務ですので、税理士にご相談ください。
また、相続人の間ですでに争いになっている場合は、弁護士の業務になります。行政書士がお手伝いできるのは、相続人の間に争いがない場合です。
行政書士がお手伝いできること
- 戸籍を集めて、相続人を確定すること
- 話し合いの内容をもとに、遺産分割協議書を作ること(売電収入や費用の扱いを書き入れることも含みます)
- FIT・FIPの認定の名義変更の手続
太陽光の相続では、設備をだれが引き継ぐかとあわせて、分割が終わるまでの売電収入と費用の扱いも話し合っておくことをおすすめします。
ふじか行政書士事務所では、太陽光発電設備がある相続の遺産分割協議書の作成と、FIT・FIP認定の名義変更を承っています。相続手続は姫路・播磨地域を中心に、太陽光の名義変更は全国からご相談をお受けしています。話し合いを始める前の段階から、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年10月時点の判例・公表資料にもとづく一般的な解説です。ご紹介した平成17年9月8日の最高裁判決は賃料について判断したもので、太陽光の売電収入の扱いについて直接判断したものではありません。個別の事情によって結論が異なることがあります。相続人間で争いがある場合は弁護士、税務に関することは税理士、設備や土地の登記に関することは司法書士の業務となります。
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