以前掲載した名義変更の連載が「何をするのか」の話だとすれば、今回から始めるこの連載は「なぜ止まるのか」の話です。
中古の太陽光発電設備を買った、あるいは売った。契約は済んでいる。あとはFIT認定の名義を変えるだけ――そう考えて手続に入り、そこから数か月動けなくなる。事業譲渡に伴う変更認定申請には、そうなり得る構造があります。
不備通知には、2つの種類があります
認定申請の窓口に書類を提出すると、内容に不足があった場合に不備通知が届きます。実務上、この時点で状況は大きく2つに分かれます。
ひとつは、記載漏れや添付書類の不足といった形式的な不備です。これは期限内に補正すれば足ります。
もうひとつが問題で、そもそも申請の前提となる要件を満たしていない場合です。この場合は書類を直せば済むという話にはなりません。申請そのものを取り下げ、要件を満たすところからやり直すことになります。
やり直しが重いのは、時間の構造にあります
典型的なのが、周辺地域への周知に関する要件です。
資源エネルギー庁は2024年2月に「説明会及び事前周知措置実施ガイドライン」を策定し、一定の場合に、周辺地域に対する説明会または事前周知措置の実施を求めています。事業譲渡等を原因として認定事業者を変更する場合も、この対象に含まれます。そして同ガイドラインは、これを認定申請日の3か月前までに実施することを基本としています。
ただし、すべての設備が対象になるわけではありません。出力10kW未満の住宅用太陽光と、屋根設置の太陽光発電事業は対象から除かれています。屋根設置は出力にかかわらず除外されますので、この点は誤解のないようご注意ください。
また、対象となる場合でも、求められるものは一律ではありません。高圧・特別高圧の設備では説明会の開催が求められる一方、10kW以上50kW未満の低圧では原則として事前周知措置で足ります。ただし低圧であっても、敷地境界線から100m以内に同一事業者等の発電事業があり、出力の合計が50kW以上となる場合などには、説明会が必要とされています。負担の重さが変わりますので、まずどちらに当たるかの判定が出発点になります。
つまり、この要件を満たさないまま申請していたことが判明した場合、周知をやり直したうえで、そこから3か月待つのが原則になります。書類を書き直す時間ではなく、あらかじめ定められた待機期間です。ガイドラインには期限の取扱いが変わる場合の定めもありますが、それを当てにして計画を立てられる性質のものではありません。
そして、これで終わりではありません。取り下げた申請を途中から再開することはできず、あらためて出す申請は一からの申請になります。資源エネルギー庁は、申請から認定までにおおむね3か月程度を要するとしています。周知の3か月に、この審査期間が最初から積み直されるわけですから、失われる時間は3か月にはとどまりません。
設備の売買では、引渡しや代金の決済、買主側の融資実行が認定の名義変更と連動していることがあります。この空白は、そうした予定を根本から組み直させるものです。
なぜ、そこまで難しいのか
手続が重くなる要因は、いくつも重なっています。
- 判断の根拠が、事業計画策定ガイドライン、説明会及び事前周知措置実施ガイドライン、変更手続の整理表などに分散している
- それらの改訂が続いている。周知に関するガイドラインは2024年2月に策定され、2025年4月、さらに2026年4月にも改訂されている
- 手続が電子申請であり、譲渡人と譲受人の双方の操作が必要になる場面がある
- 添付する公的書類に有効期間があり、揃える順番を誤ると取り直しになる
- 設備の立地によっては、複数の法令について該当の有無を一つずつ確認しなければならない
ひとつひとつは、時間をかければ理解できるものです。しかし、これらを同時に、正しい順番で組み立てる必要があるところに、この手続の難しさがあります。
正直に申し上げます
実際に一連の手続を進めてみて、率直に感じたことを書きます。
これは、個人の方がご自身で申請できる水準のものではありません。制度を調べる時間を惜しまない方であっても、要件の判定を一か所誤れば、取り返しに数か月を要します。しかもその誤りは、申請して不備通知を受け取るまで表面化しません。
10kW以上の設備に関する手続については、専門家への依頼を強くお勧めします。
費用を惜しんでご自身で進めた結果、やり直しで数か月分の売電収入と売買のスケジュールを失うのであれば、本末転倒です。
相談は、不備通知が来る前に
もうひとつお伝えしたいのは、相談の時期です。
不備通知を受け取ってからご相談いただいた場合、こちらで選べる手はすでに限られています。周知のやり直しが必要と判断されれば、3か月の待機は動かせません。加えて、申請は一から出し直しになります。大幅な時間の損失が、その時点で確定してしまうということです。
一方、売買を検討している段階、あるいは申請の前にご相談いただければ、周知の実施時期から逆算してスケジュールを組むことができます。同じ手続でも、着手の時期によって結果が変わります。
次回予告
第2回は、申請書類のなかでも手間のかかる関係法令手続状況報告書を取り上げます。市役所や県の出先機関に一つずつ照会していく作業と、「該当なし」を確認することの意味を扱います。
ふじか行政書士事務所では、FIT・FIP制度の変更認定申請および各種変更届出、これに伴う事前周知措置の実施支援を承っています。兵庫県内、播磨地域を中心に対応しております。設備の売買をご検討の段階からご相談ください。
※本記事は2026年8月時点の公表資料にもとづく一般的な解説です。要件の判定は設備の規模や立地によって異なり、制度改正も続いていますので、実際の手続にあたっては資源エネルギー庁の各ガイドラインの最新版をご確認ください。設備や土地の登記に関することは司法書士、税務に関することは税理士の業務となります。

コメントを残す